【社会人恋愛スカッと台本見本】冤罪を背負った孤児が町工場から挑む23年越しの逆転劇
プロローグ
ユウト(俺の名前はユウト。23年前、10歳の俺とタイガは養護施設「つぼみの家」にいた。ある日、大手メーカーヨコザワの社長夫妻と、タテダとか言う聞いたこともない町工場の社長が揃って養子を探しにきた。そこから、俺たちの運命は動き出したんだ)
10歳のユウトが園庭の隅で農機具をバラシている
それを眺める園長と養親候補たち
園長「ご覧下さい。あの子、ユウトは本当にモノづくりが好きなようでして」
ヨコザワ社長「昔を思い出します。私とこちらのタテダ、子供時代に2人して機械をバラシて戻せなくなっては、あなたのお父上によく叱られたものです(笑)…うん、、いい子だ。あの目、本当にモノづくりが好きなんでしょう」
陰から大人たちを不安げに見つめるタイガ
タイガ(園長…なぜユウトばかり褒めるんだ…大会社には…俺がふさわしいに決まってるのに…)
施設の二階ベランダ
タイガ「ユウト、お前モノづくりが好きなんだろ?町工場に行きたいって言えよ。大会社は俺が行く!」
ユウト「それを決めるのは園長先生と養親さんだ。俺たちが話すことじゃない」
タイガ「言うと思ったぜ。まぁいい、俺は、俺の人生を自分で掴んでやる」
タイガは、ためらわず自らベランダから飛び降りた
ガヤ「誰かベランダから落ちたぞ!」
落ちて怪我をしたタイガに駆け寄る子供
タイガ「リョウタ、見てたよな?俺がユウトに落とされるところを!」
リョウタ「見…見たよ!ユウトさんがタイガさんを落とした!落としたんだ!」
ヨコザワ夫人「そんな乱暴者はダメよ!ねえあなた?」
ヨコザワ社長「…ああ、そうだな」
いぶかしげに見つめる町工場タテダ社長の姿
ユウト(こうしてタイガは晴れて大会社ヨコザワの養子へ、俺は町工場タテダに拾われることになった)
タイガ33歳 ヨコザワ常務
タイガ(俺は33歳の若さで、ヨコザワの常務まで登り詰めた。いずれ社長になるのは当然だが、古株のバカ専務のお下がりはごめんだ。サッサと会社から退場させなきゃな…って噂をすればバカ専務のお通りか)
タイガ「専務、今日はいよいよタヨトの新型水素エンジン、その心臓部品となるコアユニットの試運転ですね」
専務「うむ。私の特許による心臓部品の力で、究極のエンジンが完成するんだ!ヨコザワはもっと大きくなるぞ!」
タイガ「はい!僕も昨夜は興奮して眠れませんでした!」
タイガ(ざーんねん、失敗は決定してるんだよ!次期社長に王手、なんてさせるかよ(笑))
≪新合弁工場≫
タヨト社長「ヨコザワさん、心臓部品の完成、感謝する。新型水素エンジン初始動を、製造責任者アカリ君!」
アカリ(タヨト社長の娘)「はい!それでは僭越ながら…始動ボタン…オン!」
静かに動き出す新型水素エンジン。
モニターには様々な数字が表示されていく。
専務(あれ?なんだこれ?何この数字?心臓部品…動作してない?数字が上がらないよ!…ヤバイヤバイヤバイ…)
タヨト社長「専務、この数字は何だ?」
アカリ「どうしたのよ専務!事前に聞いてたスペックと全然違うんだけど!」
専務「あれれおかしいですね(笑) おい!スズキ課長!どーなってんだ確認しろ!」
スズキ「ははは、はい只今!」
タイガ(ククク…良いザマだな専務さん(笑)なんで失敗したと思う?それはな、俺様が予算を半分流用したからだ(笑)それでちゃんと作れるわけねーだろ。さらに念のため、欠陥パーツを使わせてるのさ。全部そこのスズキにやらせてな(笑))
ニヤリと笑うスズキ
スズキ(見ましたかタイガさん?俺の華麗な働きを!上級部長昇進の約束、絶対に守ってもらいますよ?)
アカリ「泣いてる!私が丹精込めて育てた水素エンジン君が泣いてるわ!」
ヨコザワ社長「専務、いったい何が起こってるんだ!」
専務「えーとえーと…」
タイガ(フフフ…お嬢さん、親父、もっと怒れよ。怒れば怒るほど、専務の失脚が決定的になる。でも安心しな?心臓部品は、専務からバトンタッチした俺が完成させるからよ(笑))
エンジンを抱きしめて泣き始めるアカリ
タイガ(機械バカの変な女だが、大タヨト社長の娘だ。心臓部品を完成させた俺を惚れさせて、最終的には婿入りしてタヨトの全てを俺のものにしてやる。俺はヨコザワ程度で収まる男じゃない!さあ親父!心臓部品の担当を俺に変えろ!)
ユウト33歳 タテダ副社長
ヨコザワ社長「タヨトさん、本当に申し訳ない。私から製造について頼みがあるんだが」
タイガ(よし言え親父、担当を俺に変えるってな(笑))
タヨト社長「聞きましょう」
ヨコザワ社長「心臓部品の製造を、下請に回させてもらいたい」
タイガ(そうそう新担当はこの俺…って何?下請?は?)
タヨト社長「お宅の特許技術無しには無理なのでは?」
ヨコザワ社長「先日、タテダ製作所の新特許を見せてもらいましてね。その特許の方が簡単に低コストで心臓部品を作れます。ウチのメンツより、世界環境のため一刻も早く新型水素エンジンの完成を」
タヨト社長「さすがヨコザワさんだ。一任しますよ」
タイガ(ざけんなクソ親父!ちゃんとやればウチで作れんだよ!しかもタテダの特許って、たしか孤児院で一緒だったユウトの野郎が取得したヤツじゃないか?)
アカリ「タテダ…さん?の特許って?」
ヨコザワ社長「概要資料を持ってきた。見るといい」
食い入るように読み込むアカリ
アカリ「何この技術、面白い!趣あり過ぎ!お願い!私も開発に参加させて!」
ヨコザワ社長「仕方ありません。罪滅ぼしのためにもタテダ側に頼んでみましょう」
アカリ「やった!」
数日後、タテダ製作所会議室
ユウト(俺はユウト。町工場の養子だ。仕事にのめりこんでるうちに気づけば副社長。だがそんなのは飾りだ。俺は今も毎日現場で油まみれ。そんな中編み出した技術で特許を取ったんだが、驚くような案件が舞い込んできた。入院中の親父、そして仲間のためにも成功してやる!)
ユウト「こちらこそお願いします!アカリさんも、どうぞよろしく。それとタイガ、お前と仕事で組むのは初めてだな。うれしいよ」
タイガ「あ…ああ、よろしく…」
タイガはユウトの差し出す手を取るしかない
アカリ「ユウトさん、特許の資料凄かったです!一緒に開発できてうれしい!頑張りましょう!」
タイガ(待て機械オタク女!お前は俺がタヨトに入りこむ道具なんだよ!浮気すんな!)
ヨコザワ社長「担当は、専務から私が引き継いだ。予算を気にせず、存分に打ち込んでくれ」
タイガ(まずい!ウチの専務ならまだしもユウトにだけは負けられん!あいつには孤児院時代から負けっ放し。大人になってからも負けるのかよ?しかもあの研究フェチ女、まさかユウトに惚れてねーだろうな?あの野郎が俺を差し置いてタヨトに入り込んだりしたら、俺は確実に憤死だ。よし、ユウトだけには成功させんぞ!絶対に阻止してやる!)
裏切りと妨害
ユウト妨害の腹が決まり、手を差し伸べるタイガ
タイガ「タテダ製作所が究極のエンジン最後の砦だ。頼む、絶対に成功させてくれ」
ユウトはタイガの手を熱く握りしめる
ユウト「今回の心臓部品、ウチの特許はベストマッチだ。納期は絶対に守る。安心して待っていてくれ」
アカリ「タイガさん安心して!何たって私がいるんだから!それにしてもユウトさん開発のこの特許!美しくて惚れ惚れしちゃう!」
タイガ(コラコラそこの理系喪女、なに目をキラキラさせてんだよ!)
ユウト「よしみんな!始めるぞ!」
全員「おーーーっ!!」
タテダ製作所会議室
ユウト(開発開始から2日目の深夜、俺とアカリさんはサブリーダーのマモルに会議室まで招集された)
ユウト「どうしたマモル?あまり楽しい話じゃなさそうだが」
アカリ「皆には内緒の話?」
マモル「まずはこの書類を見て下さい」
2人は書類のコピーを受け取った
ユウト・アカリ「「こ…これは!」」
マモル「御覧の通り、裏で入手したヨコザワさんの開発記録です。ぶっつけ本番の一発勝負に勝つためには手段なんて選んでられません。なぜあの大企業が失敗したのか、歴史から学びましょう」
ユウト「失敗を学ぶと言っても…これを見るとあらためてヨコザワの特許より、俺たちの特許の方が心臓部品には適しているのが分かる。とはいえ、地道に試作品のバリエーションを多く取れば、あとはトライアルの回数で…え?」
マモル「やっぱり副社長も僕と同じ部分がおかしいと思ったみたいですね。だから資料をお二人だけに見せたんです」
ユウト「開発の内容が…試作部品の作り方、実験の回数、まるで低予算プロジェクトのような…タヨトとの合弁事業とは思えない内容…まさか⁉」
アカリ「そういえば私はヨコザワの開発現場を視察してるんだけど、みんな覇気がなくて驚いちゃった。新製品開発なんてやってるだけで全身から元気がみなぎるのが当たり前なのに」
ユウト・マモル「それはあなただけです」
アカリ「でもこの記録が本当だとしたら…ヨコザワはモノづくりを冒涜しているわ!」
ユウト「ああ、俺たちも危ないかもしれないし、対策が必要かもな…ただそれ以上に開発だ!一刻も早く心臓部品を完成させなければ!」
タテダ製作所 引きの絵
太陽と月がグルグルし、時間の経過を表現する
夜明けのタテダ休憩所━太陽の光が差し始め、小鳥の声が聞こえる
ユウト(不眠不休での開発を続け、ついに心臓部品は完成した。実験の結果も上々、あとはタヨトのエンジンに組み込むだけ。ホッとして力が抜けたのか、俺たちは休憩室で完全に眠り込んでしまったのだった…)
全員が眠りこける中、ムクリと起き上がる人影
ゴトウ「いやー睡眠薬って効くんだな…みんな爆睡で草~(笑)」
ゴトウは完成した心臓部品を手に取ると…
ゴトウ「よーし、ここをこうしてっと…フフ、完璧だ…タイガさん、やりましたよ!明日の試運転でも前回同様失敗するのは間違いなし!これで俺も、大企業ヨコザワの部長職…グフフフ…」
クライマックス
タヨト・ヨコザワの合弁工場
タヨト社長「これより二度目の試運転を開始する。アカリ、始動だ!」
アカリ「はい。(頼むわよ…私たちの心臓部品ちゃん)スイッチオン!」
エンジンが静かに始動した。
すると前回とは異なり、すぐにモニターの数値が上昇を始める。
ユウト「よしよし、来い来いーー!」
アカリ「オッケー!前回と全然違うわ!すごい数値が出てる!」
タヨト社長「素晴らしい!世界よ、これが究極のエンジンだ!」
ヨコザワ社長「やったぞ!成功だ!合弁事業成功だ!(泣)」
場が歓喜に包まれるなか、タイガとゴトウだけがお通夜状態
タイガ(おいゴトウ!まさかお前しくじったってのか?)
ゴトウ(いやいやタイガさん、僕は手はず通りにやりましたよ!)
アカリ「あれれ?お二人だけ表情が暗いですね?どうしました?」
タイガ「な、何言ってるんですか!喜んでますよねゴトウさん、あはは!」
ユウト「タイガ、お前たちがもっと笑えるように、おもしろ動画を流してやるよ。みなさん注目!」
大モニターにテロップが表示される
『スズキ&ゴトウ inヨコザワ開発室』
スズキ『いいか?心臓部品のココを、私が作った特性ダミー部品に交換するだけで、新型水素エンジンの試運転は100%失敗だ。大丈夫、その場で調べられても確実に何も出んからな』
ゴトウ『メチャクチャ不安ですが…そんな簡単な手順で良いんだ!助かります(笑)』
ゴトウ、慌てて映像を止める
ゴトウ「皆さん信じないで下さい!これはAIで作った捏造動画です!そもそも試運転は成功してるでしょ?僕は無実です!冤罪です!」
ユウト「ゴトウさんが細工したのはこちらのスペア部品。成功したのは正式版が無事だったから、だけですよ?何ならスペアでも試運転します?」
ゴトウ「ス、スペアが不良品なのを僕のせいにしないで下さいよ~(泣)」
ユウト「交換されたダミー部品、本体との接地面にゴトウさんの指紋があったら、さすがに証拠になるでしょ?」
ゴトウ「…お…オワタ(泣)」
タイガ「ゴトウさん何てことをしてくれたんですか!犯罪ですよこれは!」
ユウト「あわてるなタイガ、さっきの動画の続きを見てくれ」
モニターに再度動画が流れる
スズキ『この試運転潰しは、前回既に私が成功させてるヤツだ。手順も簡単だしゴトウ君なら朝飯前だろ?』
ゴトウ『こんなんで僕なんかが町工場から大ヨコザワの部長職へ棚ボタ転籍、マジでタイガ様様ですよ(笑)でもスズキさんは上級部長就任でしょ?うらやましいです』
スズキ『おいおいゴトウ君、こっちは開発予算の半分をタイガ常務に流すのと同時に、開発責任者の専務には予算不足を誤魔化すっていうS級難度の裏工作だぞ?上級部長で当然だろ(笑)』
ゴトウ『うわースズキさんワルっすね~(笑)』
場が静まり返る
アカリ「ヨコザワ社内の不正なお金の流れも、帳簿上の裏付けが取れました。タイガさん、あなたの個人口座への資金流出も、全て証拠を掴んでますよ?」
放心状態で立ち尽くすタイガ
ユウト「全ての始まりはヨコザワの開発記録の入手だった。アカリさんが知ってる心臓部品の予算と記録の差から、心臓部品製造の不正を確信した。それで俺とアカリさんはヨコザワ社内の調査に着手したんだ」
タイガ「簡単に言うな!ヨコザワの誰がお前の言うことなんて聞くんだ!」
ユウタ「確かに、町工場の俺が何を言っても…」
アカリ「タヨト家の人間とはいえ小娘の私が何を言っても…」
ユウタ・アカリ「ヨコザワ内部の不正調査なんて出来なかった」
ユウタ「だったらなんで!」
そこに電動車いすに乗った初老の男性が入ってきた
タテダ社長「私が、ヨコザワ社長に、いや同じ孤児院出身のヨコちゃんに頼んだんだ」
結末
タイガ「タ…タテダのオヤジさん…退院してたんですか?」
ユウト「いや、親父の体はマジで厳しい状態だ。でも病院から一時帰宅して、今回のお前の不正調査の指揮を取ったんだ。お前への罪滅ぼしのためにな」
タイガ「罪滅ぼし?ハハ…笑うところか?おかげで俺は破滅しちまったんだぞ?」
ヨコザワ社長「私とタテッちはお前達と同じ「つぼみの家」出身者。2人とも養子となり園を出たんだが、同じように子宝に恵まれなかった。だからあの日、2人揃って養子を求めて園に行ったんだ」
タテダ社長「あの日、タイガ君が自分でベランダから飛び降り、ユウトのせいにしたことを私たちは知っていた。だが、あそこで何もかも詳らかにするのは2人の将来にかえって悪影響だと思った」
ヨコザワ社長「園の存続問題にすら発展する可能性もあったしな。それにタイガ、お前の目的のためなら手段を選ばない強さが、ヨコザワを大きくしてくれるんじゃないかと期待した部分もある」
タテダ社長「だが、間違いだった。あの時に君を止めず、こんな大きな不正を行う大人にしてしまった私たちを許してくれ。罪を償うんだ、タイガ君。そして、やり直してくれ。人生をな。まだ、いくらでも間に合うから」
タイガとゴトウは何も言わず警察に連れていかれた
ヨコザワ社長「ユウト君、うちの息子が君たちの精魂こめて作った心臓部品にまで手をかけてしまった。同じモノづくりに携わる者として、お詫びの言葉もない。頼む、何か償いをさせてくれ」
ユウト「俺からは何も…あ、今回みたいな挑戦し甲斐のある仕事、これからも回して頂ければうれしいです!(笑)」
ヨコザワ社長「それは私から頼みたいくらいのことだ。他には?」
ユウト「ならば…タイガ達が罪を償ったら、また迎え入れてやって下さい。おれはアイツと、ちゃんとモノづくりで戦いたいんです」
ヨコザワ社長「わかった。約束しよう。ありがとうユウト君」
アカリ「ついでと言ってはなんだけど、私からはパパにお願いがあるの!」
タヨト社長「お願いって…まさか?」
アカリ「私をタテダ製作所に出向させて下さい!ユウト副社長のモノづくりの精神を学びたいんです!」
マモル「アカリさん、それが本当の理由ですか?(笑)」
アカリ「(顔を真っ赤にして)べ、別にユウトさんに惹かれたりとかなんてしてません!…ってあれ?私なに余計なことを!あわわわ」
タヨト社長「出向って言っても戻ってこないやつじゃないのかソレ(泣)」
ユウト(俺たちのモノづくりはこれからも続く。結局、正直に作ったものが最後に残るんだ。タイガ、俺はお前を待ってるぞ)